共感すること・一緒に楽しむことが大切
何かに集中して取り組むことは、将来の小学校以降の教科の学習にもつながる大切な経験です。幼児教育では、興味をもって自発的に遊ぶ、つまり「夢中で遊びこむ」ことが重要だと考えます。実はこれを可能にするひとつの大きな要素は、「一緒に楽しみ、共感してもらう人の存在」です。
ママが、「これはおもしろそう!」と取り組む様子を見せることは、子どもを活動に引き込む重要な鍵です。例えばサロンで活動中になんとなく歩き回っているとき、子どもはママが自分の方を見ているのを感じ取っています。そこで、逆にママが活動に集中するのを見ると、「オヤ?なんだろう」と戻ってきたりします。ママが真剣な様子に刺激され、とたんに興味を示してやりだすかもしれません。
そして、一緒に遊んでいるとき、目を合わせて、じっくりと話す。おもしろいこと、楽しいことを言葉にしてあげて、その気持ちに豊かな表情で共感するのがとても大切です。この時期の子どもには、遊びの内容よりも、遊びを通して、気持ちを共有してもらったと感じたり、相手への愛情や信頼を感じることの方が重要といっても過言ではありません。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、家事、仕事をしながら常に子どもと一緒に過ごしていると、何かしながらではなく、みっちりと子どもと一緒に遊びこむ機会は、実はそう多くないのかもしれません。ママが公園で、おもちゃで、絵本で「遊ばせる」というよりも、「一緒に遊ぶ」ことが、集中を持続する要素です。
環境づくり・足場作り
子どもが活動に集中していくためには、子どもが気を散らさずに自然と活動に取り組める環境を作るということも大切だと思います。椅子の配置を変える、子どもの目に止まるところに気をそらすようなものを置かないといったことです。逆に、普段から絵本を子どもの目の高さの棚に置くことで、自分から絵本を開いて読むことのできる環境づくりにもなります。
また、子どもの活動の持続には大人のサポートが重要です。発達心理学では「足場かけ」「足場づくり」(scaffolding)といいます。子どもの活動を補い、子どもが今もっている能力よりも少し上のところにいく足かけを作ってあげることを意味します。
アンケートに、「最近、お絵かきをしたがるわりに、あまり描かなくなってしまった。どうして」という回答がありました。集中の話と関連があると思いますので考えてみたいと思います。どうしてか推測するに、「あれ描きたい!これ描きたい」と「?描けない…」がでてきたのかもしれません。「これやりたいなー」、「こうしよう」と取り組むことができるということは、ただ画用紙にクレヨンの線をぐるぐると描く時期から、目的とイメージのようなものがもてるようになったという、認知的発達の現れと考えられます。また、心身の発達も目覚しく、子どもは意欲的にさまざまな活動に取り組もうとします。
しかし一方で思ったようにできないことが多いのが2歳ころなのです。思うようにできず欲求不満で「キーッ!」となったり、急に泣き出したりします。したがって、なかなか描こうとしなくなったのは、もしかすると子どもなりに「できるかな…」「できないかも…」と少し不安があるのかもしれません。そのような時は、大人のちょっとした手助けによって、すっと前に進むことが多くあります。さりげなく何を描こうとしているのかを聞いて、車だったら、「ここにタイヤがあるんだよね」などと、ちょっとヒントを出すことで、「そうか!」と描くことができるかもしれません。
このように、子どもの集中を深め、活動を豊かにする手助けにはいくつか方法があります。今度、「なかなか集中しないな…」というときは、試してみていただければと思います。