ママの存在が心の支え
自宅ではひとりで楽しく遊べる子どもが、初めての訪問先では、ママにしがみつき片時も離れようとしないのは、新奇の場所で高まった不安を、愛着の対象であるママとのかかわりによって解消するためだといえます。
親子サロンに初めて来た時は、子どもはきっと知らない人がたくさんいて、「??」と不安です。子どもによっては、自分と同じくらいの子どもと接するのがほぼ初めてという場合もありますから、ママから離れるのが難しいでしょう。しかし何度か親子サロンに通ううちに、プログラムの流れが分かり、先生やたくさんのママたちと子どもたちがいる環境にも徐々に慣れてきます。自宅にはないおもちゃもたくさんあり、少しずつ母親から離れて、興味をもったものに触れ、試し、遊ぶようになります(発達心理学では、愛着を基盤にした「探索活動」と考えます)。これはママが近くにいる、という安心感、心理的支えがあるからこそ可能なことで、ママは子どもにとっての「安全基地」になっているのです。
また、いつもは活発に遊ぶ子どもも、おもちゃの取り合いをして悲しい気持ちになったり、なんだか朝から調子が出ない日は、ずっとママにくっついているということもあります。ママにしてみると「今日はどうして…」と、じれったさを感じることもあるでしょうが、親子の間に信頼感と愛情が築けている証ですし、子どもなりに不安や悲しさなどの気持ちに一生懸命対処しようとしているともいえます。
そのような時は、優しく抱っこしてあげてください。段々と調子を取り戻し、何かのきっかけでヒョイと元気になることもあります。
さて、近くで遊んでいるときは、たしなめたり、「ホラ見て!」と次の活動に引きつけたりしやすいのですが、逆にママからすっかり離れてキョロキョロ、チョロチョロするようになると、そうも行かなくなります。絵本や製作のときもおもちゃで遊ぼうとしたり、歩き回って声を上げたりされると、ママとしてはやきもきするところでしょう。また、「こっちおいで!」といっても、「イヤ!」といって全然別のことをされると、ママも困ってしまうのです。
幼児前期(2、3歳ころ)は、運動機能の発達も進み、それまで手助けしてもらっていた生活のさまざまな行動も自分でできるようになります。ですから、「できる!」という自分の能力の拡大と、大人からの「しつけ」のせめぎ合いが起こるわけです。しかし、基本的に乳児期において愛着や信頼感を得た幼児は、親の「しつけ」を徐々に受け入れ、着実に生活行動を発達させていき、自分ですることに自信をつけていきます。行きつ戻りつしつつも、子どもが愛着を基盤に外の世界に踏み出して経験を広げ、自分に自信をもつ姿を見守る気持ちが大切です。